■ファウルの裏にあった心理
私は湘南の試合をよく見る。そして舘という選手を高く評価している。三重県出身で1997年12月14日生まれの25歳。四日市中央工業高校から日本大学を経て2020年に湘南とプロ契約(大学4年時から「特別指定選手」として湘南に在籍)。3バックの一角として、派手さはないものの、責任感が強く、非常に堅実なプレーを見せる選手である。さらに4シーズン目を迎える今季は、ビルドアップ、攻め上がりの面で長足の進歩を見せ、成長を続けている。
だがこのとき、舘は自分が大きなミスをしたと感じたに違いない。茨田のパスは弱かった。それを見た森島が猛烈に詰め寄ってくる。それでも舘は右に開いたMF石原広教にパスを出そうと、ボールには寄らず、その場にとどまってもぎりぎりのところでプレーできると判断したのだろう。しかし森島の出足は速く、舘のパスはブロックされ、再び舘に当たって内側にこぼれた。そこにベンカリファがきたのだ。
確かに左サイドを突破される状況だったが、突破され、クロスを上げられても、湘南にははね返すチャンスは十分あったし、たとえシュートまでいかれてもゴールの枠を外れる可能性もあった。広島のパスワークのなかで同じ状況のベンカリファにパスが通り、左サイドへのスルーパスを狙っている状況だったら、舘はいつもどおり粘り強くポジションを取り、スルーパスを出された後の状況にチームメートの動きを見ながら対応できただろう。