日本のサッカーは成長を続けている。だが、発展の余地は、まだ大きく残されている。サッカージャーナリスト・大住良之は、最近のJリーグでの試合で、その「カギ」を見た。
■開始13分での退場劇
自分のミスでボールを失った選手がそれを取り戻そうと無理なプレーをし、反則になってしまう―。どんなレベルでも、1試合に1回はこうしたシーンを見るような気がする。選手たちの心理状態は十分に理解できるし、もっと言えば、「責任感」のある選手だからこそ、こうしたプレーになってしまうのだろう。しかし、こうした状況を自分自身でコントロールできないのは、やはり選手として未熟と言わざるをえない。
5月27日に行われたJ1リーグの「サンフレッチェ広島×湘南ベルマーレ」で、前半13分に湘南のDF舘幸希がレッドカードを受けた。
自陣右サイドでMF茨田陽生からパスを受けようとした舘。しかし広島MF森島司に詰め寄られて失い、ボールは内側の広島FWナッシム・ベンカリファに向かって転がる。森島はそのまま左タッチライン方向に走り、ベンカリファはそこにスルーパスを送ろうとしている。絶対にそのパスを通させてはならないと、舘はベンカリファがパスしようとしているボールに向かって猛烈な勢いで走り寄り、左足を伸ばして飛び込んだ。
しかしボールには触れることができず、パスを出した直後のベンカリファの右足に舘の右足(折りたたんだままだった)が触れ、ベンカリファは吹っ飛んだ。ボールは森島には渡らずタッチラインを割り、松尾一主審は迷わず舘にレッドカードを示した。