このカップは当然持ち回りだったが、「3回優勝したチームは永久保持できる」という奇妙な取り決めがあった。1970年にメキシコで開催された第9回ワールドカップでブラジルが3回目の優勝を達成、「ジュール・リメ・カップ」の所有権はFIFAからブラジル・サッカー協会の手に移り、協会の金庫に大事に保管されていた。しかし1983年、他のふたつのトロフィーとともに盗まれてしまった。犯人はすぐに捕まったが、カップはすでに溶かされた後だった。

■刻まれる名前

 「ジュール・リメ・カップ」のラピスラズリの台座には、優勝チームの名を記したプレートが取りつけられていた。台座は八角柱の形をしていたため、第8回イングランド大会までは1面1枚のプレートで1大会ずつ優勝チーム名を刻むことができたが、その次、第9回大会分のスペースはなかった。そこで1970年メキシコ大会を前にプレートだけが直され、1枚のプレートに2チーム分の名を刻めるようにした。しかし5枚目のプレートの上半分に「ブラジル1970」の文字が刻まれた後、残る3枚のプレートは無銘のまま残され、そして13年後にはすべてが失われたのである。

 あまり知られていないが、現在の「FIFAワールドカップ」にも優勝チーム名が刻まれている。通常は見ることができないところ、そう、直径13センチの「底面」に刻まれているのである。17チーム分のスペースがあるというから、2038年大会まではこのトロフィーでなんとかなるらしい。だが2042年大会に向けては、名前の入れ方を工夫するか、新しいトロフィーをつくるか、考えなければならない。

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