大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第112回「カップかトロフィーか」(1)「カップ」ではないワールドカップの画像
世界の誰もが夢見る黄金の「FIFAワールドカップ」 (c)Y.Osumi

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト・大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回はキャプテンがこれを両手で持ち、チーム全員で「ウ~~~、ワッ!」という瞬間が至福。

■公募されたデザイン

 「世界で最も重要な優勝カップは?」という質問を受けたら、私は迷うことなく「FIFAワールドカップ」と答える。スポーツのなかで最大の競技人口とファン人口を誇るサッカー。その最高峰のもの、世界のサッカープレーヤーとファンの誰もが夢見るのが、世界に向けてこのカップを掲げることだからだ。

 だが「ワールトカップ」と言いながら、これは「カップ」ではない。

 「FIFA World Cup」と名づけられたこの優勝トロフィーの誕生は1974年。この年に西ドイツを舞台に開催された第10回目のワールドカップに間に合うように製作された。4年前、前回のメキシコ大会でブラジルが3回目の優勝を飾り、規定によって当時の優勝トロフィーである「ジュール・リメ・カップ」を永久保持することになった。そこで大会の主催者である国際サッカー連盟が、いわば「引退」した旧トロフィーに代わる新トロフィーのデザインを公募した。

 全世界から53点もの応募があったなかから見事当選したのは、イタリアのシルビオ・ガッザニーガ(当時53歳)のデザイン。ミラノのベルトーニというメダルやトロフィーを制作する会社に所属する彫刻家だった。

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