■のどかだった開幕戦
それより少し前に、横浜F・マリノスで監督をしていた岡田武史氏にインタビューしたことがある。その時に、「現役時代に監督だった人から影響を受けていることはあるか?」と質問してみたのだが、岡田氏の答えは「JSL時代の監督とJリーグ時代の監督ではまったく違うから参考になんかならない」と言われたものだ。
たしかに、昔の監督は選手交代の時の指示も「点を取ってこい」といったアバウトなものばかりだったのだ。現在のJリーグの緻密な戦術的なサッカーなど、30年前には考えられないことだった。
そういえば、5月14日の午前中にはNHKのBSで30年前の「開幕戦」ヴェルディ川崎対横浜マリノスの試合が放映されていた。チアホーンの甲高い音が鳴り響く旧・国立競技場のピッチ上で三浦知良(カズ)やラモス瑠偉、木村和司やラモン・ディアスなどが華麗なテクニックを見せていた。
だが、彼らが中盤でボールを持っても、相手は一向にプレスをかけてこないのだ。
中盤には大きなスペースが存在し、名手たちは時間的な余裕を与えられ、パスを受けると前を向いてからそのテクニックを思う存分に発揮していたのだ。
それが、30年前のJリーグのサッカーだった。