■全国をつなぐネットワーク
30年前の「オリジナル10」は、関東地方の6クラブのほかは静岡県、愛知県、大阪府、広島県に1つずつと、分布が非常に偏っていた。もちろん、今でも神奈川県にはJ1クラブが4つ、J3クラブが2つと多くのクラブが集中しているが、ほとんどの地方のほとんどの都道府県にクラブが存在しているのだ。
純粋に興行のことだけを考えれば、クラブ数を(それこそNPBのように)10クラブ前後に絞って、ビッグクラブだけのリーグを作った方が採算が取りやすいのかもしれない。
だが、Jリーグというのは興行だけを目的としている組織ではない。
社会に根付いたクラブがJリーグの理念である。日本のほとんどの都道府県にそうしたクラブが存在し、クラブ同士やサポーター同士のネットワークが築き上げられている。
たとえば、2011年の東日本大震災の時には、被災地域のクラブに向けてそうしたネットワークを通じた支援の動きが広がった。
日本という社会は、こうした非政府的なネットワークで全国がつながることによって強靭化できるはずだ。
これから人口が減少していく日本という国の将来を考えれば、そうしたネットワークで社会がつながって一体感を持てるのは重要なことだ。サッカーという世界的なスポーツを通じてのネットワークであれば、これから間違いなく増えていくであろう外国にルーツを持つ人々を巻き込んでいくことも可能だろう。