■2つの「皿」
実はこの時期、グレミオは会長選挙戦のまっただなかにあったのである。このころのグレミオでは、信じ難いことではあるが、毎年全会員の投票で会長を決めていた。当時のクラブ会員は4万人とされていたが、会員になるための「積立金」に参加している人が5万人もおり、トヨタカップが行われる12月には、正会員は8万人増えるはずと、コフィ会長は話していた。
ともかく、現状でも4万人の会員がそれぞれ1票をもち、会長を決めるのだ。立候補者は2人。リベルタドーレス杯を初制覇し、クラブをかつてない高みに導いて波に乗るコフィ現会長と、コフィ会長への根強い不満をバックに「返り咲き」をはかるドゥラド前会長である。
会長が変われば、クラブの役員も一蓮托生で変わる。だから選挙は「チーム戦」であり、コフィ会長のチームは「Chapa 1(シャパ・ウン)」、ドゥラド会長のチームは「Chapa 2(シャパ・ドイス)」と呼ばれていた。「シャパ」とは、直訳すれば「皿」であるが、この場合には「グループ」と訳すのが適当かもしれない。
選挙ポスターがあるわけではなく、もちろん、宣伝カーが走り回っているわけではない。しかし水面下では、両陣営の熱い戦いが繰り広げられていたのだ。