■仕掛けられた罠

 ともあれ、私の取材は順調に進んだ。サワベ・カメラマンが到着するまでの1週間で、監督、主要スター選手へのインタビューをほとんど終え、アウェー試合の取材(ベルモンチ氏のラジオ放送クルーと小型バンで250キロほど離れた町に行った)もこなした。そしてサワベ・カメラマンが到着した9月8日の午後には、2人でクラブが所有する「オリンピコ」と呼ばれるスタジアムの撮影取材に回っていた。

 「今晩時間はあるか?」とクラブスタッフのひとりに聞かれたのは、そんなときだった。

 「もちろん。ありますよ」

 「では、会長主催の食事会があるから、きみたちも招待しよう」

 「ありがとうございます。何の食事会ですか」

 「リベルタドーレス杯優勝の祝賀会だよ。では迎えの車を行かせるからね」

 それが、言ってみれば「罠」であることに、私はまったく気づかなかった。

(3)へ続く
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