2023年のJリーグが開幕して、2か月が経過した。J1とJ2では、順位表に近年にはなかった様子が見られる。新たな変化は、ピッチ上にも現れている。今シーズンのJリーグで見え始めた新たな潮流を、サッカージャーナリスト・後藤健生が読み解く。
■首位攻防戦を分けたポイント
4月16日の日曜日。J2リーグ第10節の注目の一戦は首位の大分トリニータと2位につけるFC町田ゼルビアの直接対決だった。
開幕から首位を走っていた町田だが、第8節のホームゲームでブラウブリッツ秋田に敗れ、第9節ではジュビロ磐田と引き分けて首位の座を明け渡し、代わって4月に入ってから3連勝の大分が首位に立っていた。
しかし、“首位決戦”では町田が23分から39分までの17分間に3ゴールを沈めて、あっけなく勝負が決まってしまった。
町田のハイプレスが実に効果的だった。
町田は、第7節(藤枝MYFC戦)までわずか1失点と堅守を誇るチームだが、これまではもう少し低い位置でボールを奪っていた。だが、大分戦では前線からプレッシャーをかけて相手のパスミスを誘発したり、大分が中盤に付けてくるボールをカットしたりと、これまでになく高い位置でボールを奪って完全に主導権を握った。
先制ゴールはデザインされたセットプレーから生まれた。
23分の右CKの場面で高江麗央がキックする直前に、ニアサイドで平河悠がゴールから離れる方向に動きだし、一瞬遅れて翁長聖が後を追うように動く。キッカーの高江はその翁長にボールを入れ、翁長は反転してゴールラインに近い深い位置に走り込んだ平河に預け、平河のクロスを荒木駿太がフリーになって蹴り込んだ。
これは、あまり見たこともないような鮮やかなセットプレーで、大分の守備陣は平河と翁長の動きに惑わされて、中央に走り込む荒木を見ることがまったくできなかった。
この見事なセットプレーは大分守備陣に相当なショックを与えたようで、33分にはDFが荒木にボールを奪われて2点目、39分には中盤から速いパスをつながれてエリキにとどめの3点目を奪われた。