■20年目の全面改修

 さて、2001年完成の埼スタに敷設されたのは、寒地型だった。さいたま市の夏は、東京の冷房で出された熱気が南風に乗って北上するため、酷暑の地として知られている。その地で敢えて寒地型を採用した背景には、ある技術があった。地中にパイプを通し、夏には冷水を通してピッチ温度を上げないようにし、逆に冬には温水を通して霜を防ぐという装置を設置したのだ。その装置を働かせるためにピッチ内には数多くの温度センサーが設置された。だが近年はそのセンサーの経年劣化でこのシステムがうまく機能しないようになっていたという。

 というわけで、埼スタを所有する埼玉県は、小石層と床砂層、さらには温度センサーまで含めたピッチの全面改修工事を、2021年のシーズン終了後から2022年春にかけて行うことにしたのである。

 ところが、埼スタは浦和レッズのホームスタジアムというだけでなく、日本代表の重要なホームスタジアムである。2022年ワールドカップ出場を目指してアジア最終予選を戦っていた日本代表は、2021年10月までに4試合をこなして2勝2敗。10月に埼スタでオーストラリアに競り勝ったものの、勝ち点6でオマーンと並び、総得点数で劣って4位。このままではプレーオフ出場もできないという苦境に追い込まれていた。

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