■現在とまったく違うピッチの姿
気になっている読者がいると思うので、もうひとつ蛇足を書いておくと、このスカバローという町は、後年、アメリカの2人の若者の歌で世界的に知られるようになる。サイモン&ガーファンクルの「スカバロー・フェア~詠唱」である。「スカバロー・フェア」は、この町で中世から続く夏限定のマーケット(フェア)を歌ったイングランドの古歌で、それにポール・サイモンが詞を書き、アート・ガーファンクルが曲をつけた反戦歌をからめたものが1960年代に世界的に大ヒットした。
では1902年の私の誕生まで、サッカーのピッチはどうなっていたのだろう。サッカーは私が生まれる49年前、1863年に誕生した。信じられないかもしれないが、その当時はタッチラインもゴールラインもなかった。ピッチの4隅にフラッグが立っていただけだった。ゴールも、8ヤード(7.32メートル)の間隔で棒が2本立てられているだけだった(シュートはいくら高くてもよかった)。
当時のルールではゴールキーパー(GK)はいなかった。大きく飛んできたボールを誰でもキャッチすることが許されていたからだ。ゴールを守るためにボールを手で扱うことができる特定の選手(すなわちGK)が生まれたのは、1871年のことである。その「特権」は1887年に自陣に限るとされ、そのルールはそれから1912年まで続けられた。