大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第102回「ペナルティーエリア その絶妙な存在」(1)競技誕生から50年目にできた「サッカーで最も大事な場所」の画像
1902年のIFAB議事録に出たペナルティーエリアの姿。サッカーのピッチは、このときほぼ完成した。(c)IFAB

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト・大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回はゴール前の大きな四角。ペナルティーエリアが自らを語る。

■121年前の誕生日

 ワシはいま120歳。6月には121歳になる。そう、1902年の6月16日がワシの誕生日というわけじゃ。

 う~ん、この「じゃ」はいかんな。120歳とはいえ、ワシはまだ現役中の現役。この後は「ワシ」も「じゃ」もやめにして、普通に「私」「である」などで進めることにしよう。

 さて、生まれた日のことはよく覚えている。場所は、イングランド北部、北ヨークシャーの北海に面するスカボローという町。海に面した「ザ・グランド・ホテル」である。このホテルは1867年に完成したというから、当時すでに築35年だったが、立派なホテルだった。6月のよく晴れた気持ちの良い朝。どこまでも青い空、そこに浮かぶ白い雲、そして夏の日差しにキラキラと輝く海。ホテルが面する北海からは、心地良い風が吹いていた。

 国際サッカー評議会(IFAB)の17回目の年次総会。イングランド・サッカー協会(FA)のチャールズ・クランプ副会長を議長に、イングランド、スコットランド、アイルランド、ウェールズの各協会の代表が集まり、サッカーのルールの改正などを話し合う会議である。言わずもがなのことだが、国際サッカー連盟(FIFA)の創立はこの2年後の1904年のことになるから、参加はしていない。

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