■組織と個のバランスという大テーマ

大住 鎌田はワールドカップ前ぐらいからだいぶ良くなったけど。

湯浅 それは認める。しかし最後のところで行き方がぬるま湯だった。クロアチア戦の失点の場面を言っているんだけど。鎌田は天才だから、1対1でボールを奪い返すのはうまい。しかし自分が取れないと判断すると、とたんに甘くなる。さぼる。天才と言われる選手の多くがそうだよね。

 取れないと思ってもしっかりと行かなければならない。そうしないと相手は自由にプレーしてしまう。だから味方に信頼されなくなる。信頼されないから、いい形で走ってもパスももらえない。それを回りのせいにする。だからチームワークを乱す。

大住 そんな鎌田を、森保監督はなかなか代えなかったね。あの試合、最初に代えたのは「意志の力」を見せ続けていた長友佑都前田大然だった。

湯浅 天才は「麻薬」なんだよ。

大住 優勝したアルゼンチンにはリオネル・メッシ、準優勝のフランスにはキリアン・エムバペという天才がいて、彼らの力が存分に生かされた決勝戦となった。

湯浅 そこにもう1つのテーマ「組織と個のバランス」という側面がある。今回のワールドカップには2つのタイプのチームがあった。クロアチアとモロッコは完璧に組織プレーでやっていた。最後の最後まで、全員がさぼらず、すごい組織プレーだった。その一方で、フランスとアルゼンチンはエムバペとメッシ。ふたりともまったく追いかけない。しかしそれ以外の選手たちの仕事量がすごかった。

大住 周りがきちんとカバーしていたのは、本当に驚いた。

湯浅 鎌田に、エムバペとメッシのパフォーマンスができるなら、それでよかった。そうでないのなら、ハードワークを徹底しなければならない。鎌田が本気でそれをやったら、すごい選手になる。「ボールを追いかけたら、周りの目が変わってくるし、あんたの価値が100倍上がるぜ」って、言いたいね。

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