日本サッカー界に、異端児がいる。欧州でプロクラブの監督をできるライセンスを持ちつつ、マーケティング会社を経営し、メディアの世界でも活躍してきた湯浅健二さんだ。サッカージャーナリスト・大住良之が、ワールドカップと新シーズン開幕が迫るJリーグをテーマに独特の視点からの貴重な意見を聞きだした。
■鎌田を評価しない理由
大住 ところで、カタール2022は、サッカーの新しい進展があったと感じた?
湯浅 戦術的なことは、昔から全部わかっていた。半世紀近く前、1974年にオランダのリヌス・ミケルス(監督)が見せたサッカーで、すべての戦術的要素が出ていた。彼と話したことがあるけど、「俺は歴史に残るサッカーができたと思っている」と、胸を張っていた。そしてそのとき彼がこれからサッカーはこうなるって話していたとおりになっている。
「最後は何ですか」と聞くと、「フィジカル」。戦術的な理解、テクニック、そしてフィジカル。最後の最後は精神的なものになる。
大住 そう。サッカーをやるのは人間だからね。
湯浅 精神的、心理的な面、つまり自分の「意志の力」が重要になる。たとえば、よく、「このシステムだからここにスペースができて、そのスペースをつかれた」などという解説を聞くけれど、僕に言わせれば「単に選手がさぼっただけじゃない?」ということになる。
やらなければならないこと、相手がボールをもって攻め込んできたときにどこを埋めなければならないかは、選手たちはみんな知っている。わかっていなかったらプロなんてできない。だけどそれをやるかどうかは、選手たちの「意志の力」にかかっている。
大住 そのとおりだね。
湯浅 僕が鎌田大地を評価しないのはその点にある。