■サッカー界の異端児
湯浅健二さんは非常に変わった人だ。北海道で生まれ、神奈川県で育ち(育ちすぎて189センチという長身になってしまった)、大学卒業とともにドイツに留学した。ケルン国立体育大学で学び、1981年にドイツの「スペシャル・ライセンス(プロサッカーコーチライセンス)」を取得。
このライセンスは欧州サッカー連盟(UEFA)のプロライセンスも兼ね、欧州のトップリーグで監督ができる資格である。1982年に帰国して読売サッカークラブ(現東京ヴェルディ)でコーチを務めた後、1986年からマーケティングの会社を営み、同時にメディアの世界で活躍してきた。数多くの著書があるが、現在は『湯浅健二のサッカー・ホームページ』というサイトを中心に、自在に持論を展開している。
日本のサッカー、あるいはもっと広く日本の社会において、彼は間違いなく「異端児」である。直截(ちょくせつ)的な表現で物議をかもすこともある。しかし何ものにもとらわれない自由な発想、ピッチの上でサッカーを表現する選手や監督たちを「ロボット」ではなく「人間」として見る目の温かさと厳しさから生まれる意見は、傾聴に値すると私は思っている。今回は、昨年のワールドカップをどう見たか、湯浅さんと話しながら、今季のJリーグにどうあってほしいか、何を見たいかを考えてみた。
ただし、湯浅さんはカタールには行っていない。東京に残り、自宅で全試合のテレビ中継を見た。湯浅さんと話したかった理由のひとつがそこにある。私はカタールに行って毎日試合を見た(ときには2試合)が、実際にスタジアムに行くことができなかった試合をじっくり見ることができたわけではない。そうした立場の違う人の見方を問うことは、私のような仕事でとても重要なことだと思っている。
この記事はラフな会話体になる。湯浅さんは私と同年代で、いつもこんなふうに話しているので、ご容赦願いたい。