■大事な成長のきっかけ

大住「釜本さんは決して、早熟だったんじゃないんだよね。もちろん抜きんでた体力などはあったけど、メキシコ五輪までは日本のトッププレーヤーじゃなかった。トップは杉山隆一さんだったし、釜本さんは良い素質を持った選手ではあったけれど、まだプレーのスピードが足りないと指摘されたり、まだまだだなと言われていたんだよ。メキシコ五輪が開催される1968年の初めに、ドイツに3か月間のトレーニング留学をして、蝶が羽化するように、本当にまったく別の選手になった」

後藤「どのレベルの選手にも、そういう時期はある。コンスタントに上昇していくるタイプもいるけど、奥寺康彦さんもドイツに行く直前、古河電工で化けて、パルメイラスに短期留学して化けて、とんでもない選手になって、あっという間にブンデスリーガに行っちゃった。そういう時期ってあるんだよね」

大住「例えば、今回の日本代表で最後に追加で選ばれた町野修斗だって、もしかしたら何かの刺激でそうなるかもしれない。今回は1試合も出なかったけれど、4年後には大エースになって、ワールドカップ1大会で8得点する選手になっているかもしれないよ。そういう可能性を皆が信じて、挑戦しないといけないよね」

後藤「釜本さんの時代は、ヨーロッパに行くなんてほとんどありえない時代だった。今では、才能がある選手は黙っていても向こうから獲得に来る時代なんだから、誰かがそういう成長を果たす可能性は昔よりはるかに高いよね」

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