■カタール開催を肯定できない理由

 しかし、それでも僕はワールドカップのカタール開催を肯定する気にはまったくならない。

 西欧諸国からカタールが告発されているのは外国人労働者の問題と性的マイノリティー(LGBTQ+)に対する差別問題の2点である。

 このうち、後者に関してはいささか「価値観の押しつけ」のような気もする。というのは、西欧諸国だって、つい数十年ほど前までは宗教的な理由から同性愛を処罰の対象としていたからだ。

 しかし、外国人労働者に対する搾取は現代社会でけっして許されることではない。

 ワールドカップ関連の工事で生命を失った労働者は6500人に上ると言われている。もし、この数字が事実でなかったとしても、石油や天然ガスの産出によって膨大な資金を持つ豊かな湾岸諸国の人々が低賃金の外国人労働者を搾取している実態は許し難い。

 ワールドカップの開催によって、そうした非民主的な政治体制の権威付けに少しでも手を貸す結果になってしまったのだとしたら、自分たちの利益のためにカタールに開催権を与えたFIFAのリーダーたちは恥を知るべきだ。

 また、人口がわずか250万人ほどで(そのうちカタール国籍は約30万人)、さしてサッカー熱が高いわけでもない国に4万人以上の大規模スタジアムを7つも建設したことは(ハリファ国際スタジアムは既設)資源の無駄使い以外の何物でもないし、環境に与える負荷も大きかったはずだ。

 大会後はダウンサイジングされるというが(974スタジアムは解体)、いずれも大会後の後利用ができるとは思えない。

 カタール・スターズリーグ加盟クラブは、たとえばアルサッドならジャシム・ビン・ハマド・スタジアム、アルドゥハイルならアブドラ・ビン・ハリファ・スタジアムといったように、1万人から2万人ほどを収容する適正規模のスタジアムを使用しているのだ。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4