■見事だった大会運営

 大会の運営は確かに見事だった。

 カタールは膨大な数のバスを動員し、新しく開通させたメトロ(地下鉄)を駆使して懸念されていた交通問題をうまく解決した。あれで、バスの運転手がちゃんと道順を知っていてくれれば満点だった(運転手が道を間違えてウロウロしたのは一度や二度ではなかった)。

 ボランティアの人たちは、これまでの大会に比べて施設の位置などについて比較的正確な知識を持っており、観客の誘導もうまくいった。

「メトロ~、ディスウェイ!」。

 現地に観戦に行った人たちが将来思い出すのは、試合後に観客をメトロ駅に誘導するボランティアたちによるこのフレーズなのかもしれない。

 宿泊問題は未解決のままで、劣悪な宿泊所で高額な料金を取られた人も、ホテルに泊まって通常の10倍近い料金をぼったくられた人も多いようだ。

 しかし、僕は大会開幕直前に1泊66ドルの施設を見つけたのでそれほどの出費は強いられなかった。簡素極まる施設だったが、完全個室で熱いお湯のシャワーが使え、テキストファイルをやり取りするのが精一杯としても一応wifiもつながっていたのだから文句は言えない。

 東西1キロ南北2キロ強の施設の中で、約1万人の各国サポーターたちと一緒に暮らすという興味深い体験もできたし(僕の部屋の周囲はほとんどアルゼンチン人だった)、ドーハ市内から距離はあったが、メトロの最寄り駅や国際空港、そして試合の日にはスタジアムまでのシャトルバスが頻繁に出ていたのでまったく不自由はしなかった。

 雨が降る心配もなく、夕方になれば気温が下がって観戦環境も快適。そして、わずか17泊で29試合も観戦できたのだから満足するしかない。

 4年後のワールドカップはアメリカ、カナダ、メキシコの共同開催で、東はボストンから西はサンフランシスコ、北はバンクーバーから南はメキシコ市までの広域開催となる。毎日の移動に疲れ果てた時には、きっとドーハでの経験が懐かしく思い出されることだろう。

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