■モロッコが勝てた理由

 「新興国」でただひとつ勝ち上がったのはモロッコだった。スペインと120分間戦って0-0からPK戦3-0の勝利。しかしクロアチアに1-1、PK戦1-3で敗れた日本との差は、PKだけではない。

 スペインが圧倒的にボールを支配し、1000本を超すパスの93%を味方につなげた。しかし試合としてはまったくの互角といってよかった。スペインも絶好機をつかんだが、モロッコにもあわや決勝ゴールというチャンスが何回もあった。シュート数はモロッコの6に対しスペインは倍以上の14だったが、枠内シュートは逆にモロッコが多く、3対2だった。

 モロッコは最後の最後までタフに戦った。なかでも右サイドバックのアシュラフ・ハキミの運動量は驚異的だった。味方ボールになると長い距離をスプリントして攻撃をサポートし、右サイドから何回もチャンスをつくった。このハキミに象徴されるタフさこそ、日本との大きな違いのひとつだった。

 キックオフ前に、後藤さんと「モロッコの選手たちも大きくなった」という話をしていた。かつてのマグリブ(アルジェリア以西の北アフリカ)の選手たちは、テクニックは高いが体が小さく、欧州のパワーに圧倒されていた。しかしスペイン戦に先発したモロッコの選手たちは左MFのソフィアン・ブファル(170センチ)以外の全員が180センチ以上あり、パワーではむしろスペインを上回っていた。当たり負けせず、足元のデュエル勝利数では9対6でスペインを上回った。走るべき状況なら延長戦でもスプリントを繰り返すフィジカル能力が、日本との最大の違いだった。

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