■「突破」よりも大事なこと
もうひとつの要素が、相手の強烈なプレッシングをグループで打開する能力を身につけていたことだ。大味なチームに見えて、選手間の距離はいつも絶妙だった。近寄った3人のワンタッチのパス交換で抜け出すプレーを何回も見せ、スペイン選手の体力を消耗させた。日本も技術は高いはずだが、劣勢のなかで選手間の適切な距離を取りきれず、クロアチアのプレスに選手が孤立してボールを失うことが多かった。
日本のサッカーにとって今回のワールドカップで残された最大の課題が、「ベスト8の壁」を突破するために何をしなければならないかであるのは間違いない。
だがそれは、「4年後」への課題という捉え方だけでは足りないように感じる。8年後、12年後を考え、それぞれの時点での到達目標を明確にして、この時点から取り組みを始めなければならない。
良い選手を並べ、おそらく大会への準備もうまくいったに違いないモロッコが「ベスト8の壁」を破った。だがモロッコが次大会でもこのレベルに到達するとは、まだ思えない。そして、ブラジルを筆頭に、「常連」の国々が今大会も「最後の8チーム」に残り、見知った顔ぶればかりで優勝を争おうとしている。
「ベスト8の壁」を突破することではなく、「ベスト8の力をつける」ことを目標にしなければならない。たまたまベスト8にはいるのではなく、ラウンド16の組み合わせを見たときに、世界の多く人が勝ち残るチームに日本を挙げるような状態を目指さなければならない。そうでなければ、ワールドカップ優勝などという大目標に向かっていくことなどできない。