■欧州勢への対抗策

 一方で、地理的条件だけを考えれば、いっそう有利なはずの中東勢はいずれもグループリーグ敗退に終わっている。開催国カタールと、カタールと地上国境を接している唯一の国サウジアラビア。そして、ペルシャ湾の対岸に位置するイランの3か国である。

 サウジアラビアは初戦でアルゼンチンに逆転勝ち。そして、イランはウェールズに2対0で完勝と、それぞれ結果は出したのだが、残念ながら両チームはともにグループステージ敗退に終わった。

 中東勢の問題の一つは、ほとんどの選手が国内リーグ所属であるという点だ。

 天然資源からの豊富な収入で潤う中東産油国のクラブは、国や王族からのサポートもあって裕福であり、選手たちにとって海外クラブに出ていくモチベーションが少ない。イランには、かつてはドイツのブンデスリーガで活躍する選手が多かったが、最近はほとんどが国内組だ。

 アジアに限らず、他大陸のチームがヨーロッパ勢と対戦する試合を見ると、「ヨーロッパ勢のインテンシティーの高さにどこまで対抗できるか」が勝負を分けることが多い。

 その点、現在ではヨーロッパ各国リーグの上位争いをするクラブでプレーしている選手も多い日本は、ドイツやスペインの選手を相手に気後れせず、森保一監督の言葉を使えば「同一目線で」戦うことができていた。

 所属クラブのレベルはそれほど高くないにしても、オーストラリアも多くの選手がヨーロッパで戦っている。

 韓国は最近はヨーロッパのクラブで活躍する選手が減っているが、たとえばトッテナム・ホットスパーでプレーする孫興民(ソン・フンミン)はプレミアリーグでもトップクラスと認められた選手であり、今大会は負傷明けでフェースガードをしながらのプレーを強いられたが、最終ポルトガル戦での劇的な決勝ゴールの場面では力強いドリブルで相手ゴール近くまでボールを運んで相手のマークを引き付けて、一瞬タメを作ってからパスを出して違いを見せた。そして、孫興民からのパスを受けて決勝点を決めたのも、やはりプレミアリーグのウォルバーハンプトン・ワンダラーズ所属の黄喜燦(ファン・ヒチャン)だった。

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