■森保監督が板倉に声をかけ、指で「3」と示した

 森保監督が動いたのは35分過ぎだ。

 板倉滉に声をかけ、指で「3」と示した。4バックから3バックへ変更する、とのメッセージである。

 4-2-3-1から3-4-2-1への変更は、ドイツ戦と同じだ。違ったのはタイミングで、ドイツ戦は後半開始から3バックに変更したが、この日は前半終了を待たずに手を加えた。

「こういう大きな大会で、緊張感のあるなかで、流れのなかで(システムを)変えるのは難しい。ただ、攻めてボールを保持している時間が長かったので、変えられるという判断だったのだと思う」

 こう話すのはキャプテンの吉田麻也である。臨機応変さや柔軟性という意味で、このタイミングでのシステム変更にネガティブさはない。

 そもそものところで言えば、W杯アジア最終予選の主戦術だった4-3-3でなく、9月の欧州遠征から再び採用した4-2-3-1でもなく、3-4-2-1をW杯で積極的に採用していることに、率直に驚かされる。

 サンフレッチェ広島を指揮していた当時の森保監督は3-4-2-1を採用しており、戦術的な落とし込みのノウハウは手元にあるのだろう。さらに言えば、非公開練習というカーテンの向こう側で、かねてからトレーニングを重ねてきたのかもしれない。それにしても最終予選突破後になるはずで、6月と9月のタイミングしかない。

 いずれにせよ、実戦でほとんど使ってこなかった3-4-2-1のシステムを、選手たちは戸惑うことなくプレーしている。これは評価されるべきである。

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