■新たな攻撃手段「ロングスロー」
ただ、近年、トップクラスのサッカーで「ロングスロー」を重要な攻撃手段として使うチームが増え、こうしたケースではしっかりルールを守らせることの重要性が説かれるようになった。
といっても、「ロングスロー」は近年に始まったことではない。イングランドで最も有名なロングスローは、1970年のFAカップ決勝戦、チェルシー対リーズで生まれた。ウェンブリー・スタジアムで2-2の引き分けに終わった18日後、マンチェスターのオールド・トラフォード・スタジアムで再試合が行われたのだが、この試合も90分間を終わって1-1。その延長戦の前半14分に、チェルシーが驚くべき決勝点を挙げたのだ。
左サイド、コーナーから20メートルほどハーフラインに寄った地点からのスローイン。投げるのは、チェルシーの長身FWイアン・ハッチンソンである。彼はヘディングシュートの名手として知られていたが、同時にロングスローも得意としていた。チェルシーのデイブ・セクストン監督は、2人のハッチンソンがほしかったことだろう。
だがこのとき、ハッチンソンはボールのすぐ近くにいたため、自ら投げることを選んだ。ボールは高く上がり、リーズのゴールエリアまで飛んだ。高くジャンプして頭で触れたのはリーズのDFジャッキー・チャールトン。だがクリアしきれず、ボールはファーポスト前へ。そこに飛び込んできたのが青いユニホームのチェルシーのDFデービッド・ウェッブだった。リーズの2人の選手ともつれ合うようにヘディング。ボールはゴールネットに突き刺さった。ハッチンソンのスローインが飛んだ距離は34メートルだった。