番組の内容は、さすがに後藤さんのアドバイスに従ったのか、非常にきちんとしたものだった。サッカー関係の番組を見ていて「それは違うだろう!」とテレビに向かって叫んでしまうことが多い私だが、『チコちゃん~』のスローイン解説はしっかりしたものだった。

 正直に告白するが、冒頭で後藤さんを力いっぱい悪しざまに書いてしまったのは、大好きなチコちゃんを生で見る機会を得た後藤さんがうらやましくて仕方がなかったからなのだ。実は後藤さんも『チコちゃん~』の大ファンで、そのため、このサイトで不定期に実施している後藤さんとの対談は、「金曜の8時から9時までは避ける」という黙約までできているのである。私だって、偽善に満ちた笑顔で、ひっくり返った声で、チコちゃんに聞いてみたかった!

酒井宏樹に染みついた「世界基準」

 さて、スローインは、サッカーという競技において、反則をしても最も寛容に扱われているプレーではないだろうか。両手投げのように見えても、実際には片手投げをしている例など日常茶飯事。海外のサッカーを見ていると、片足が上がっていてもまずおとがめなしだ。選手だけでなくレフェリーも世界のトップが集うワールドカップでさえ「ファウルスロー」が横行するが、反則を取られる(相手チームのスローインになる)ことは非常に希だ。

 いまカタールあるいはドバイでワールドカップに向けた準備をしている酒井宏樹選手のスローインを思い起こしてほしい。言うまでもないが、酒井選手は右のサイドバックで、スローインの機会は多い。昨年、日本に戻って浦和レッズでプレーを始めたころ、彼は平気で片足を上げたスローインをしていたが、当初はまったくおとがめなしだった。

 Jリーグのレフェリーたちが神経質になったのは、酒井選手が投げる構えをしながら本来のポイントから5メートルも、ときに10メートルも前進してしまうことだったようで、それは笛を吹いて下がらせていたが、前方に大きく投げた後に右足が高く上がってしまうことには、しばらく気がつかなかった。酒井選手のスローインは、欧州でプレーした9シーズンで、すっかり「世界基準」になってしまっていたのだ。

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