■無理がある一都市での開催

 直接的な問題点としては、なによりもドーハ(および近郊都市)だけでワールドカップという巨大な大会を開催することの是非である。32か国が参加して64の試合が行われる大会は、通常であれば人口数千万人の領域国家の国土全体を使って10か所以上の都市を使って開催される。

 2014年大会(ブラジル)、2018年大会(ロシア)は人口が2億人を超える巨大な国での開催だった(国内移動が大変だった)。

 一つの都市で、32か国の選手団や観客を受け入れることにはあまりに無理がある。通常宿泊料金が5000円程度のホテルが5万円といった料金を設定する事態が発生するのも無理からぬことである。

 また、無駄な施設の建設を避けるために、本来なら各地にある既設のスタジアムを改修してワールドカップに使用すべきだ(サッカー伝統国での開催の場合、競技場の新設はごく一部に過ぎない)。

 前回大会決勝が行われたロシアの首都モスクワでは、ルジニキ・スタジアムとロコモティフ・スタジアムが改修されて使用されたが、両スタジアムは大会後も(ロシアが無謀な侵略戦争を引き起こしたりしなければ)ナショナル・チームの試合や国内リーグの試合に継続的に使用されるはずだった。

 だが、ドーハの場合、64試合を開催するために4万人以上収容のスタジアムが8つも整備された。ハリファ・インターナショナル・スタジアムは既存施設だったが(1993年のワールドカップ・アジア最終予選のメイン会場であり、2011年のアジアカップ決勝戦の舞台)、その他は新設だ。

 ほとんどのスタジアムが、ワールドカップ終了後にはダウンサイジングされ、スタンドの資材はスポーツ施設などで活用される計画だと言われるが、どう考えても無駄な支出である(民主体制の国ではとうてい許されることではない)。

 11月開催とは別に、カタールという小国でワールドカップという巨大な大会を開催することには、どう考えても無理があるのだ。

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