蹴球放浪家・後藤健生たるもの、取材が一筋縄ではいかないことは百も承知だ。時には、スタジアムに至る道中でもアクシデントは起こり得る。1986年のメキシコ・ワールドカップの経験は、今年開催されるカタール大会での苦難も楽しい思い出に変えてくれるかもしれないと思わせてくれるのだ。
■大騒ぎのバス車内
そもそも、サッカーの試合のためのシャトルバスの運転手は大変です。満員の乗客は大人しくしているわけではないからです。どこの国のサポーターでも(日本人を除いて)車内でチャントを叫んだり歌を歌ったり、あるいは飛び跳ねてバスの車体を揺らしたりするものです。大人しいのは試合前からウイスキーを飲み過ぎてほとんど意識を失いかけているスコットランド人くらいのものです。
まあ、メキシコの運転手は国内リーグの試合でもそうした雰囲気に慣れているでしょうが、2002年大会の時には日本のバスの運転手の方々はずいぶん驚かれたことでしょう。