■ティンガに訪れた天国と地獄
難しい状況で、ティンガらはバイエルンと対戦した。幸先良く開始12分に先制したが、ドルトムント、特にティンガにとっては最悪の瞬間が訪れる。バイエルンが長いFKを蹴り込んできた際、ティンガはマークしていた選手を抑えきれず、それどころか頭をかすめたボールが相手選手に渡り、“アシスト”してしまう格好になったのだ。
「白状すると、あの瞬間から試合の緊張感がとても重く僕にのしかかってきた」
さらにはハーフタイムの前に逆転を許してしまう。ハーフタイムには監督が指示を飛ばしたが、ティンガの頭には入ってこなかったという。
「起きてしまったことは変えようがないと、自分に言い聞かせていたんだ」
「僕はもっとやらなければいけなかったし、改善しなければいけなかった。自分で自信を膨らませようとしていたんだ」
「監督に与えられた戦術的役割のことは、あまり頭に入らなかった」
だが、確かにティンガのプレーにはやる気がみなぎり、チームメイトにも伝染する。ドルトムントは57分に同点に追いつき、その2分後、ティンガに歓喜の瞬間が訪れる。左CKのこぼれ球を蹴り込み、逆転に成功したのだ。