■不自然なポーズの理由

 GKのグローブは、サッカーで最も不思議な用具のひとつである。どのチームにも必ずGKがいて、ピッチ上の11人のうち必ず1人はGKで、彼ら、彼女らは、必ずと言っていいほどGK用のグローブを着用しているのだが、ルールブック(競技規則)にはこの用具に関する規定は一切ない。GKたちはメーカーと知恵を寄せ合って自らのプレーを有利にする工夫を重ね、たえず改良を加えているのだが、用具一般に適用される「競技者は危険な用具、もしくはその他のものを用いる、または身につけてはならない」(競技規則第4条第1項)という規制以外は受けていないのである。

 冒頭に記した欧州チームの3人のGKのグローブをよく見ると、デザインや色だけでなくメーカーもばらばらなことがわかる。サッカーでは、シューズと同様、GKグローブは「個人調達」が原則で、プロだと、プレーヤーはそれぞれにメーカーと契約して提供してもらっているのである。3人のGKは、そのメーカーに義理を立てて(あるいは義務付けられて)、メーカーのロゴがはっきり見えるように不自然な手のもっていき方をしていたのだ。

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