■映像を有効活用する

――サッカーが、より緻密になりますね。

片山 疲労度や回復値への数値を考慮し、たとえば後半になると足が止まるという状況をよく見ると思うのですが、90分を通じての戦略が間違っているのではないかと思うんですよ。回復時間を含め、チーム全体のパフォーマンスを安定させるために、各選手の基本データをもう少し深掘りする必要があるのではないか。それによって戦術を変えられるのではないかと思うのです。

――選手交代などですね。

片山 それもありますし、戦い方もあります。ボールポゼッションというのは、意外に疲労が出るのです。ミスをしないように集中し続けなければならないので。だから僕は、「レストする(休む)」時間が必要だと思っています。トップアスリートだと、15秒から20秒間ぐらいあれば心拍数はトントンと落ちてくるので、そのくらいの時間をかせぐには、たとえばずっとつないでいたのを切り、相手陣のコーナーめがけて大きくけってみるというのも、実は科学的に見て非常に有効な方法なのです。

――映像はどのように使うのですか。

片山 練習や試合の映像は、通常は、戦術の分析に使うことが多いと思います。僕の場合はグラウンドを35分割して、そのときそのときの的確な立ち位置を理解させようとしているのですが、僕が映像を見るときには、その35のグリッドを選手たちがどう立てているか、そこにいちばん気をつけています。また、選手たちに実際の試合で起きていることを見せ、「あと1メートル右」などと具体的に理解させるのに役立っています。

――2年前にお話を聞いたときには、たしか「32分割」でしたよね。

片山 変えました。いまは縦を5分割、横を7分割にした「35分割」にしました。横を細かくしたのは、コーナーからペナルティーエリアまでの14メートルを2分割し、7メートルずつにしたのです。これによって三角形の反転がスムーズになり、バリエーションが増え、サイド突破が効果的になりました。

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