サッカーはどんどん、科学的になっている。もはや、切り離せない関係であると言っていい。日本でもデータを活かした指導をしているのが、片山博義さんだ。サイエンスとサッカーの関係について、サッカージャーナリスト・大住良之が話を聞いた。
■データはリアルタイムで使うべき
――さきほど「リアルタイムにデータが送られてくる」とのお話しでしたが、データが送られてきても、トレーニングや試合の場でリアルタイムに生かすのは大変だと思いますが。
片山 いまは専門家がいないので、フィジカルトレーナーがデータを受け、見ているというクラブが多く、試合後にデータ解析を行うと聞いたことがあります。リアルタイムでこそ役立つデータなのに生かされていない、試合につながっていないという印象があります。
――片山さんはリアルタイムに生かしているのですか。
片山 そこに意味があるのではないかと考えています。以前指導していたクラブでは、ノートパソコンを片手に持ってピッチに立ち、選手の身体状況に応じたトレーニングや試合運営をしてきました。
――リアルタイムでないと、試合には使えないですね。
片山 たとえとして、日本代表の長友佑都選手のプレーを考えてみましょう。あくまで仮の話ですよ。具体的に名前を出すと、イメージしやすいですからね。あれだけガンガン上がれる長友選手ですが、たとえば前半と後半で同じ状況、同じ心拍数でクロスを送るとき、精度は同じでしょうか。おそらく後半のほうが落ちるのではないでしょうか。回復値を見れば、疲労度は違うはずですからね。
それなのに、後半の残り15分でも、前半と同じようにクロスにトライしたら、GKに取られてカウンターを受けるかもしれない。とすれば、疲労度が高い時間帯になったら、クロスではなく、マイナスのパスを出してそこにサポートするという戦い方を、チームの共通理解としていく。そうすれば得点への期待値が上がりますよね。
――なるほど。
片山 チーム全体、30人の身体的能力、その特性を全員で理解することが、データをとることの最大のメリットかもしれません。