J1の優勝争いの構図が、ようやくはっきり見えてきた。昨季王者の川崎フロンターレと、3シーズンぶりのタイトル奪還を狙う横浜F・マリノスによる一騎打ちだ。先週末のJ1第28節は優勝争いの鍵となる戦いとなった。9月上旬にもタイトルの行方を左右する試合が待つ。マッチレースとなる可能性が高い優勝争いを、サッカージャーナリスト・後藤健生が読み解く。
■リズムを取り戻せなかった横浜FM
横浜F・マリノスは超攻撃的なチームで、丹念にパスをつないでビルドアップするサッカーを志向している。分厚い攻撃を展開し、たとえば両サイドバックもインサイドハーフの位置まで進出し、自らゴールを狙うこともあれば、決定的なフィニッシュのパスを出す。
だが、前半の最後の時間になって、横浜FMが試み、そしてセットプレーを奪って得点につなげた攻撃は、ロングボールを使ってサイドを衝く攻撃だった。けっして、横浜にとっては本来狙っている形ではなかった。
もちろん、苦しい状況の中でもやり方を切り替えて得点を奪って見せたのだから、「さすが横浜FM」というべきかもしれないが、やはり本来の横浜FMらしいサッカーとは違っていた。
ただ、いずれにしても、2点を奪っても横浜FMのテンポは上がり切らなかった。
後半に入ると2点を追って前からしかけてきたFC東京の攻撃の前に受け身になってしまい、その結果、川崎フロンターレからFC東京に加入したばかりの塚川孝輝に決められて、ゲームは振りだしに戻ってしまった。
最後の時間帯は激しい攻め合いとなり、試合終了直前の90+6分にはマルコス・ジュニオールのクロスに合わせたアンデルソン・ロペスのシュートがクロスバーをたたくという場面もあったが、やはり90分を通じて、横浜FMは圧倒的強さを発揮していた7月までのようなリズムを最後まで取り戻せないままだった。