■今後に生きる「コロナ禍」での努力

 一昨年の2月以来、コロナ禍とのJリーグの戦いは称賛すべきものがある。専門家の意見を容れていち早く綿密なガイドラインをつくり、調査会社にさまざま検証を依頼し、政府や地方自治体の方針に従いつつ、「ファン・サポーターとともにあるスポーツ」を取り戻そうと努力を続けてきた。その努力と決断は、日本のスポーツ界をリードするものだった。昨年のオリンピックが「原則無観客」と決まったとき、Jリーグのある役員が「私たちがしてきた努力が生かされず、残念」と涙を流したのを、私はよく覚えている。

 しかしコロナとの戦いも、そろそろ終盤を迎えているように思う。入場制限も声出し制限もなくなったとき、Jリーグは一歩も二歩も前進し、急成長の時代を迎えるだろう。これだけ徹底してファンの安全を考えた努力が、今後のリーグや試合の運営に生きないはずがないからだ。

 最後の戦いは、声出し応援のある試合の素晴らしさを広く伝え、第一に声出し以外のエリアの入場制限をなくすこと、そして第二にエリアを限定せずに声出しを可能にすること、そして最後にマスク着用義務を撤廃すること―。ゴールは見えている。そのゴールに到達するために、リーグもクラブもそしてサポーターも、それぞれが自分の立場で努力し、最終的な「勝利」だけを目指さなければならない。

 スタンドの観客が心をひとつにした、割れるような拍手も、本当に素晴らしく、「Jリーグらしさ」があふれている。しかし本音を言えば、サポーターの歌声がなければJリーグではない―。コロナ禍は、あらためてサポーターがJリーグの「宝」であることを思い起こさせてくれた。「コロナ後」にも、けっして忘れてはいけないことだと、強く思う。

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