■明らかにおかしい国の方針

 5月中旬に「声出し応援の段階的導入について」が発表されたとき、目を疑ったのは、「声出しエリア」を限定し、そこでは密を避けるために観客同士を離し(エリアのキャパシティの4分の1に限定された)、マスク着用が義務付けられたのは理解できるとしても、「スタジアム全体」の入場者をキャパシティの半分にしなければならないとなっていたことだ。もちろんこれはJリーグが考えたことではなく、国の方針だった。

 昨年の後半からせっかく戻ってきた入場者を再びキャパシティの半数に戻すのは、多くのクラブにとって死活問題だ。理屈から言えば、「声出しエリア」の入場者は制限するとしても、その他のエリア(声出しの飛沫は飛ばない)は、制限なく入れても問題はないはずだ。国の方針はどう考えてもおかしい。

 この条件では、多くのクラブが「段階的導入」を躊躇するだろうと思ったが、果たして、導入はJ2のクラブが主体で、J1では鹿島アントラーズFC東京が積極的に導入したものの、他のクラブはためらっているようだった。浦和もそのひとつだった。ルヴァンカップ準々決勝の名古屋戦は、水曜日の夜、Jリーグより人気の低いカップ戦という要素が重なり、約6万人のキャパシティをもつ埼玉スタジアムに、通常の運営形態でも3万人ははいらないという判断の下で実施されたのではないだろうか。

 だが「声出し応援の段階的導入」は、サポーターを引きつけた。この試合で記録された2万3435人という入場者数は、浦和の今季のこれまで12のホームゲームの入場者の平均(2万3053人)を上回るものになった。

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