完全に2種類に分断された日本のサッカーファン【なぜベテラン・ジャーナリストはパリ・サンジェルマンではなく天皇杯取材を選んだのか】(3)の画像
本当の価値とは何なのか 撮影:原悦生(SONY α9Ⅱ使用)

 パリ・サンジェルマンが来日中だ。Jリーグでもほとんど行われない地上波で放送され、国立競技場のスタンドは観客であふれた。そのきらびやかな試合ではなく、サッカージャーナリスト・大住良之は天皇杯取材へ向かった。その理由には、耳を傾けるべき重みがある。

■Jクラブの収益を越えるメッシの年俸

 ところで、現在発表されている両クラブの経営情報によれば、2021年度の総収益は、東京ヴェルディが17億5500万円。ジュビロ磐田も、2021年、J2在籍当時の実績だが、28億6700万円となっている。この試合が行われた味の素スタジアムから東へわずか17キロ、国立競技場のピッチで川崎フロンターレを手玉に取るように攻め続けていたパリ・サンジェルマン(PSG)は、2020/21シーズンの総売り上げが5億5620万ユーロ。当時のレートで約723億円。これは、このシーズンの欧州のクラブの第6位にあたる。メッシひとりの年俸で45億円にもなる。

 そのPSGがシーズン前にわざわざ快適な気候とは言えない日本にきて3試合も行うには、それなりの理由がある。「世界戦略」である。日本のマーケットを拡大し、クラブの収益をさらに増大させようという狙いだ。報道によれば、PSGは東京と名古屋にオフィシャルショップを置き、グッズを販売している。クラブ関係者は「日本には何百万人ものPSGファンがいる」と豪語する。

 PSGは創立1970年。欧州のビッグクラブのなかでは歴史が浅い。このころのパリは「プロサッカー不毛の地」と言われ、そう活発でないフランスリーグでも1部のクラブをもっていなかった。PSGは1974年に1部に昇格したが、それでもオリンピックマルセイユやオリンピック・リヨンといったクラブに対抗できる勢力にはなれなかった。

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