大きな変化が訪れたのは2011年である。カタール投資庁の子会社「カタール・スポーツ・インベストメント」がPSGの株式の70パーセントを取得して筆頭株主になったのだ。既存の「ビッグクラブ」を買うには相当の資金が必要だが、当時のPSGは欧州のトップ30にもはいらない経営規模で、カタールにとっては非常に安い買い物だった。しかもPSGの背景には1000万都市(都市圏)のパリという有望なマーケットがあった。
クラブを欧州のビッグクラブのひとつにするために「カタール・マネー」が注ぎ込まれ、次々とスター選手と契約した。2017年にはブラジル代表のFWネイマールをスペインのFCバルセロナから2億2000万ユーロ(約278億円)の史上最高額で移籍させ、同時に国内のライバルであるASモナコからムバッペを約180億円で獲得、2021年にはFCバルセロナとの契約が満了となったメッシを加えて、「夢のFWライン」が完成した。
■「泣きっ面に蜂」のJリーグ
現在、日本のサッカーファンは完全に2種類に分かれている。ひとつは地元のJリーグを応援している人。もうひとつは、PSGのような華やかな欧州のサッカーを愛する人である。前者はせっせとスタジアムに通い、後者はテレビやネットで試合を楽しむ。若い世代には、圧倒的に後者が多いと見られている。何を愛し、何に興味をもつかは人それぞれだが、Jリーグにとっては由々しき問題のはずだ。
コロナ禍で苦しいシーズンが続いているが、Jリーグの各クラブは懸命に努力をし、欧州のクラブに対抗できるような力をつけようとしている。サッカーの面はもちろん、経営の面でも収益を拡大し、国際的な競争力をつけようとしている。しかし現状は欧州のクラブの圧倒的な資金的パワーの前にまったく太刀打ちできない状態だ。しかもその資金の一部が、日本からのテレビ放映権収入であったり、日本の「マーケット」で日本の若者向けに販売される欧州クラブのグッズ販売収入であったりするのだから、Jリーグは「泣きっ面にハチ」といった状態だ。