「堅守速攻」から変わり切らない選手たちの意識【FC東京とアルベル監督が挑む「壁」】(1)の画像
FC東京に新しいサッカーをもたらそうとしているアルベル監督 撮影/原壮史

 FC東京は今シーズン、新たな挑戦を試みている。アルベル・プッチ監督の下、これまでと大きく異なるスタイルのサッカーに取り組んでいるのだ。挑戦の度合いに応じて大きくなる「壁」へと挑むFC東京を、サッカージャーナリスト・後藤健生が考察する。

■安定しないパフォーマンス

 7月17日のJ1リーグ第22節。ホーム、味の素スタジアムでの試合でFC東京はジュビロ磐田を2対0で破った。

 前々節(第20節)は北海道コンサドーレ札幌を3対0で破ったと思ったら、前節は浦和レッズに0対3の完敗とパフォーマンスが安定しない東京。6月には湘南ベルマーレサガン鳥栖に対して連敗(しかも、2試合無得点)も経験。天皇杯の試合でもJ2リーグのV・ファーレン長崎に敗れてもいた。

 そんな中で迎えた第22節。とりあえず磐田戦での勝利で連敗回避には成功したのだ。

 前半の早い時間に2点を連取して前半はゲームをコントロールしてリードを保ち、後半に入って磐田の反撃を受けたもののなんとか無失点で切り抜けての勝利。

 試合展開としては完勝ではある。だが、前半の2ゴールはいずれも磐田のミス絡みのものであり、2対0という結果とは裏腹に東京としてはけっして褒められるべき内容の試合とは言えなかった。

 前半はゲームをコントロールしていたといっても、その中で追加点を決められるような決定的チャンスを作れたわけではなかったし、後半はいくつものピンチがあった。

 試合後の記者会見場……。

 取材に来ていた若い記者たちのほとんどが選手の取材のためにミックスゾーンに向かってしまい、アルベル・プッチ監督が現われた時には会見場は閑散としていた。この情景を見渡したアルベル監督は「今日はずいぶん少ないですね」と前置きして、やはりいつもと同じような台詞を吐き出した。

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