■容易ではない価値観の転換

 ボール・ポゼッションを大事にするスタイルを志向しているアルベル監督は、昨シーズンまで「堅守速攻」、カウンターを使う攻撃で戦ってきた選手たちの意識を変えようとしているのだが、それが(当然のことながら)まだまだ身に着いていないのだ。

 磐田戦の前半は、たしかにポゼッションで上回った。アルベル監督がよく言う「ボールを持っているのがいちばんの守備」という意味では危なげない内容だったかもしれない。しかし、ポゼッションの中から相手の守備を崩すような動きは作れなかった。相手GKの致命的なミスで2点を奪っていたから問題はなかったのだが……。

 そして、後半はポゼッションでも下回り、磐田に押し込まれてしまってカウンターに活路を見出さざるを得ないような展開になったのだ。

「ボールを持つことの価値を選手たちに伝えようとしているのだが、容易なことではない」とアルベル監督。

「開幕当初よりはプレーが変わってきてはいるが、順調に成長しているとはけっして言えない」

 たしかに、新しいサッカー・スタイルを取り入れるというのは簡単な作業ではない。アルベル監督がよく口にする「長い目で見てくれ。今シーズンはあまり批判をしないでくれ」という訴えはそういう意味だ。

 とくに、FC東京は典型的な「堅守速攻型」のチームだったので、ポゼッション型に切り替えるのは難しいだろう。

 かつて、原博実監督(前・Jリーグ副理事長。現・大宮アルディージャ・フットボール本部長)時代には攻撃サッカーを目指したし、城福浩監督(現・東京ヴェルディ監督)がボールと人が動くサッカーを導入しようとした時代もあった。

 だが、2014年にはイタリア人のマッシモ・フィッカデンティ(前・名古屋グランパス監督)が監督に就任。フィッカデンティはわずか2シーズンで退任したが、その間に安定した守備組織を構築し、東京は2015年にはJ1リーグで年間4位と躍進した。

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