■マイナー試合の取材旅行
僕が香港に到着したのは3月24日の深夜でした。後から考えれば、まさにクラスター発生直前だったわけです。もちろん、当時も「変な感染症が流行している」ということは知っていましたが、まさか、それほど危険な状態だとは思っていませんでした。
さて、そんな時期になんでわざわざ香港を訪れたのかというと、2004年に中国で開催されるアジアカップの予備予選グループDの試合(香港対ラオス)を取材するためでした。
なんだって、そんなマイナーな試合を見に香港まで行ったのか。
それは、ある大手出版社から依頼されたからです。その出版社は5月開催予定の東アジア選手権のプログラムを作成しようとしていて、そのため、香港チームの情報が必要だったのです。正社員を派遣してSARSに感染したら大事なので、フリーランスに任せようと思ったのかもしれません。戦争報道でも同じですが、大手新聞社や出版社は危険な場所に社員を派遣せずに、フリーランスを使うのです。
まあ、病気が流行っていることは知っていましたが、わずか2泊の短い旅行だったので僕はすぐに引き受けました。取材の場所が大好きな(大好きだった)香港だったからでもあります。