優勝を遂げた「なでしこジャパン」は、「女性版のFCバルセロナ」といった言葉で紹介された。
だが、その後、ヨーロッパ勢の急速な台頭によって、日本はワールドカップやオリンピックで決勝に進むことが難しくなってしまう。ヨーロッパ各国のチームが戦術的に洗練されてきたため、高さやスピードの面での劣勢を日本式のパス・サッカーで埋めることが難しくなってきたのだ。
■呪縛となった栄光へのこだわり
しかし、世界女王の座を経験してしまった日本の女子サッカー界は、新しい哲学に切り替えることが難しかった。
2011年のワールドカップに続いて、2012年のロンドン・オリンピック、2015年のワールドカップ・カナダ大会でも決勝に進出した日本だったが(ともに、アメリカに敗れる)、その後は2016年のリオデジャネイロ・オリンピックは予選で敗退し、2019年のワールドカップではラウンド16、東京オリンピックでは準々決勝と、いずれも決勝トーナメントの最初の試合で敗れている。
それでも、日本代表は2011年と当時のパスをつなぐ「なでしこのサッカー」というスタイルにこだわり続けた。
「かつての栄光に包まれた時代の自分たちのサッカーを取り戻す」という、やや消極的な考えが強くなっていった。「かつての自分たち」にこだわる消極的な考え方だ。それを取り戻すために、日本代表はどこか悲壮感を漂わせながら戦っていた。