先週末のFC東京と鹿島アントラーズの対戦は、点差はついたが見応えがあった。また、見どころも多く転がっていた。好ゲームとなった中断期間前最後の一戦を、サッカージャーナリスト・後藤健生が考察する。
■左右で違うサイドバックのメカニズム
こうして攻撃の姿勢を強めたFC東京は、27分にチャンスを作り、選手たち全員の目が前を向くようになった。
とくに活性化したのが、左サイドだった。
FC東京は、サイドバック(長友佑都と小川諒也)の攻撃参加がストロングポイントだったが、両サイドでメカニズムは違う。
右サイドではサイドハーフの渡邊凌磨が中央に寄ってプレーして、その空いたスペースを「代表に向けてのアピール」という事情を抱える長友が利用する。
一方、左サイドではSHのアダイウトンはタッチライン沿いに張っている場面が多く、その脇のアダイウトンとタッチラインの間の狭いコースを「ポルトガル行き」という事情を抱えた小川が走り抜けていく。そして、一つ内側のレーンではアダイウトンや小川の動きに合わせて松木が前線のスペースを窺う。
守備の時間帯にはボランチの位置に落ちて守備に奮闘するかと思えば、攻撃の時間帯にはすっかり攻撃モードに切り替えることができる松木の戦術的な動きは素晴らしい。
松木は、Jリーグの中断期間中にはU-21日本代表としてウズベキスタンで行われるAFC U-23アジアカップに参加する。パリ・オリンピックを目指すこのチームでも、今後は松木が攻撃的MFとして中心選手となるだろう。松木には松木の、アピールしたい大きなモチベーションがあるのだ。