■「檻」も生み出すコーン

 まだある。Jリーグではベンチ前の「テクニカルエリア」は白い「破線」でしっかりと示されているが、私が監督をしている女子チームが活動するレベルの試合では、これも小さなコーンを使って示されるのが普通だ。

 私のチームでは、試合のための会場準備(ゴールやコーナーフラッグの設置、ライン引きから、両チームや本部ベンチやテントの設営など多岐にわたる)において、過去10年間ほど、テクニカルエリアの設置はたいてい私の役割になっている。タッチラインから1メートル、ベンチの端から1メートルの各ポイントに小さなコーンを置くとき、私はいつも自分がはいる檻を自分自身でつくっているゴリラになったような気がする。

 練習グラウンドでのコーンの人気は、試合前のウォーミングアップ時の比ではない。何十枚もの色違いの小さなコーンや大きめのコーンが用意され、練習が遅滞なく進むよう、アシスタントコーチたちは練習が始まる30分以上も前からグラウンドいっぱいに整然と必要なコーンを並べていく。おそらく半世紀ほど前まで、サッカーのトレーニングはかなりアバウトなものだっただろう。しかしいまや、コーンをはじめに各種の用具が整備され、当時と比較すると、飛躍的に緻密なものになっているのではないだろうか。

(2)へ続く
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