■さまざまな使われ方
最も多くのファンの目にさらされるのは、試合前のウォーミングアップの時間だろう。試合に先立つ20分から30分の間、両チームはピッチを半分ずつ使ってウォーミングアップを行う。そこでボールをけってピッチの状態を確認するのはもちろんだが、最近のウォーミングアップで不可欠なのが「5対5」あるいは「4対4プラスフリーマン2人」というパス回し(ボールの奪い合い)である。スペースは20メートル×30メートルほどのチームが多いだろうか。
だが試合前のピッチに白いラインを引くことはできない。そこで小さな「コーン」を並べてこのパス回しのための「コート」をつくるのである。四隅に置かれるコーンのほかには、20メートルのラインには中央に1個、30メートルのラインは3等分して2個、すなわち10メートルに1個ぐらいで小さなコーンを置くと、だいたいの目安になる。
さらに、どのチームもウォーミングアップの仕上げには細かなステップやダッシュなどを入れて心拍数を上げるのが定石だが、そのための目安として短い間隔で並べられるのも小さめのコーンである。近年では、試合開始直前のチーム写真撮影が終わった後、そしてハーフタイムを終えてピッチに出ていく直前に、数個の小さなコーンを並べて細かいステップを踏ませて、体に「刺激」を与えようとするチームも多い。
さらに2年前に世界が突然新型コロナウイルスの猛威にさらされ、ようやく試合が再開されて試合前の「チーム写真」を撮るときに選手たちにいわゆる「ソーシャルディスタンス」を取らせなければならないとなったとき、互いに離れて立ちながらもカメラに全員の顔が映るようにとクラブの広報担当者が苦労した挙げ句、それぞれの「立ち位置」を指示するものとして使われたのも、小さなコーンだった。