■釜本邦茂が見せていた矜持

 釜本邦茂はあらゆる面で「強い」ストライカーだったが、その強さの根源は彼の心のなかにあった。「自分の役割は得点を取ること」と公言し、チーム練習後に長時間さまざまな形からのシュート練習を繰り返した。もちろん、試合でシュートがゴールの枠を外れたり、GKに防がれることはあった。しかし彼は頭を抱えたり顔を覆うようなことなどけっしてなかった。たまに「しまった!」と手を打つことぐらいはあったが、たいていは平然とし、あのギョロッとした目でGKをにらみつけていた。その間に、次のチャンスにはどう打とうかと考えていたに違いない。実際、次にチャンスがくると、彼は完璧なシュートでゴールを破った。

 ではなぜ、現代のストライカーたちは「遮断」行為に走るのか。私は、それは得点を取った後の過剰なパフォーマンスが、原因のすべてとは言わないが、少なくない割合で関係しているのではないかと思っている。

(3)へ続く
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