■あまりに素敵な「馬鹿馬鹿しさ」

 蛇足を2つ。ひとつ目は、「人間テーブルサッカー」である。ドイツで行われた2006年のワールドカップの取材中、私はシュツットガルトの公園で巨大な「テーブルサッカー」を見た。サイドで横棒を操る「プレーヤー」はいない。横5メートル、縦10メートルほどのピッチ。4本渡された横棒に、それぞれ2人ずつ「生身」の人間の選手が両手を固定され、対峙する。ゴールには両手をポストに固定されたGK。「選手」は自分のところにきたボールを相手ゴールに向かってけるのである。あまりの馬鹿馬鹿しさに、私も飛び入り参加してし、大汗をかいた。

 蛇足のふたつ目も、やはりワールドカップでの経験だ。モスクワのあるデパートで、「選手」が30人対30人で対戦する特製のテーブルがなんと5台も連結され、みんなでわいわい楽しんでいるのを見た。選手はすべて1列3人で、システムを数で表現すると「3-3-3-3-3-3-3-3-3-3」となるのだろうか。ハンドルの数は、片側だけ50本。両側で100本となる。サッカーというより、サッカーの原点、中世の英国で行われていた「村対村」のフットボールのようではないか。

 「テーブルサッカー」は楽しいし、ガチャガチャという音や、思い切りボールをヒットすると、ストレスなど一挙にどこかに吹っ飛んでいく。そしてプレーしているうちに、誰もが例外なく熱くなる。その熱さは、十分、サッカー自体の熱さに匹敵する。

  1. 1
  2. 2
  3. 3