■無名の存在から王者の主力へ

 第1の候補が、川崎フロンターレのMF橘田健人だ。1998年5月29日生まれ、23歳。Jリーグに関心のあるファンなら、誰でも知っているだろう。鹿児島県出身、昨年桐蔭横浜大学から昨年川崎に加入し、Jリーグの開幕戦に交代出場でデビュー、29試合に出場して優勝に貢献、リーグの「優秀選手」31人のひとりに選ばれた。

 昨年はじめ、川崎はMFの「アンカー」として前年のJリーグ優勝に貢献した守田英正を欧州への移籍で失い、その代役として名古屋からブラジル人MFジョアン・シミッチを獲得した。シミッチはすばらしい適応力を見せてシーズン前半の川崎の快進撃(開幕から8月まで25試合不敗)を牽引したが、夏以後、そのシミッチのポジションを完全に奪ったのが橘田だった。さらに試合の状況に応じて左サイドバックとしてもプレー、チームを勝利に導いた。

 高校時代まではまったくの無名。高校は神村学園という鹿児島県を代表する強豪校だったが、全国大会出場の経験もなく、年代別代表に選ばれたこともなかった。しかし進学先の横浜桐蔭大学が横浜市の北部・青葉区にあり、川崎フロンターレのトレーニンググラウンド(麻生グラウンド)に自動車なら10数分と近いこともあって、川崎がケガ人などで人数不足のときには「員数会わせ」として横浜桐蔭大学の選手がたびたび呼ばれてトレーニングに加わっていたという。橘田はそうした機会に川崎の指導陣から目をつけられ、それを契機に自信をつけて大学4年時には関東大学リーグのベストイレブンにも選ばれた。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4