IOCも、FIFAもロシアの(あるいは中東の)巨額な「テレビ・マネー」とともに、“怪しげな”資金に頼っているのが現状なのだ。

 さすがにロシアの侵略戦争開始直後に始まった北京パラリンピックではロシア、ベラルーシ両国の選手の出場が認められないこととなったが……。

■昔から続くスポーツの政治利用

 スポーツというのは、本来的に生産的なものではないので、外部からの資金を受け入れる必要がある。20世紀初頭までは、スポーツに参加する上流階級の人たち(アマチュア)のポケットマネーで賄われていたが、その後は政府の補助を受けたり、各地元の富豪や企業からの援助(スポンサー料)が資金源となった。もちろん、入場料収入やグッズ販売などのビジネスも展開したが、それですべてを賄うのは不可能だった。そして、スポーツに関する経費が高騰するとともにテレビ放映権料が重要度を増し、さらにはロシアや中東の資金、アメリカのスポーツ・ビジネスからの資金(これは、利益を追求するための語義そのものの「投資」)などが流入するようになった。

 専制主義的な国の資金に頼ることも、何も最近になって始まったことではない。

 民主主義的な体制の国では、スポーツに国家資金を投入するためには国民や議会の同意が必要となる。

 たとえば、1930年代。1929年に始まった大恐慌の結果、第1次世界大戦後ずっとオリンピックを開催してきた西ヨーロッパ諸国や北米ではオリンピック開催に名乗りを挙げる国が少なくなってしまう。

 そこで、専制主義体制の国が手を挙げた。1936年のオリンピックはアドルフ・ヒトラーが支配するドイツ・ベルリンで開催され(ベルリン開催が決まったのはヒトラーの政権掌握より前のことだったが)、1940年大会は中国大陸に向けて軍事進出を活発化していた日本の東京での開催が決まっており、さらに1944年大会はベニト・ムッソリーニの「ファシスト党」による独裁下にあったイタリア・ローマ開催が選ばれる可能性が高かった。

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