■カギになる修正力

 今季の川崎Fでは、試合中の修正により流れを取り戻すシーンがあった。

 まずは2月23日に行われた第9節の横浜F・マリノス戦でのハイプレス修正。川崎Fのプレッシングは、WGが敵SBへのパスコースを背中で消しつつ敵CBへ奪いに行く形がベースとなっているが、WGのポジショニングが甘いと敵SBに易々とボールをつながせてしまうことになる。
 
 昨シーズンまでは田中碧旗手怜央といった主力IHが広大なスペースをカバーし、敵SBの位置まで素早く奪いに行っていたが、彼らが移籍したことでそのカバーリングも厳しくなってきている。

 この横浜FM戦では、WG裏のスペースにボールを運ばれるようになると、そもそものプレスのかけ方を修正。WGが外切から中切りの誘導に変更し、相手SBへボールをつながせるようにする。そしてそこへIHが出て行く形を取り、見事に相手のビルドアップを苦しめた。

 また、3月2日の第10節浦和レッズ戦ではビルドアップを修正。前半に左SBの登里享平が負傷すると、代わって入ったのは、試合後のインタビューで「左SBは練習でもやったことがない」と語った塚川孝輝だった。

 その塚川は慣れない位置からのビルドアップに苦しみ、攻撃面でなかなか貢献できなかった。しかし、後半に入ってCBの谷口彰悟山村和也が位置を入れ替え、組み立てに長けた山村が塚川をサポート。すると、これによって時間とスペースを多く得た塚川が輝きを取り戻し、左サイドから効果的な縦パスが通り始める。そして勢いを増したチームは一気に2得点を奪い、逆転勝利を収めている。

 試合後のインタビューで鬼木監督が「本人たちが替えた」と語っていたように、自主的な戦術変更ができることを見せつけたゲームだった。

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