■開拓の余地が残されているスポーツ界

 テニスの世界でも、技術を活用した面白い試みが行われている。1月に行われた全豪オープンでは、センターコートを「商品」として売った。

 仮想空間上でセンターコートを6000以上に分割して、それぞれの区画を仮想通貨を利用してNFT(ノン・ファンジブル・トークン)として販売。自分が手にした区画にウィニングショットが決まると、保有者にさまざまなグッズが当たる、という企画だった。こうしたデータや技術の活用に、山本氏も「本当に面白いことを考えますよね。きっと、もっといろいろなアイディアが出てくるのではないでしょうか」と笑う。

 最近の日本のスポーツ界では、団体や組織の経営問題など、ネガティブな話題が目につく。そもそもソニーがホークアイをグループに迎えたのは、ホークアイの保有する技術そのもの、あるいはスポーツ、どちらの可能性に魅力を感じたのか。「その両方だと言っていいいと思います」と、山本氏は即答した。

 現在、ホークアイの技術は、サッカーやラグビー、テニスなど、25競技以上に活用されているが、その拡大はまだまだ続きそうだ。それにより、サッカーのVARのような判定ビジネスも、使い方が広がっていく。

 例えばバスケットボールでは、シュートされたボールが落下を開始してからブロックすると反則になる。「シュートの軌道をトラッキングして、ボールが上昇している時には緑、下がり始めたら赤で示す、そんな新しい判定のビジネスもできるのではないかと思います」。

 北京オリンピックではスノーボードなどで競技の採点が話題になったが、ホークアイを使って演技のすべてを数値化、さらにさまざまな形式の映像にすることで、「正しい採点」ができるようになるかもしれない。競技そのものに加えて、ファンの関わり方・楽しみ方と、スポーツにはまだまだ開発できるフィールドは多く残されているのかもしれない。

「まったく想像できないようなところに、可能性はあるかもしれないと思っています。楽しみですよね」

 スポーツの可能性の開拓は続く。

テクノロジーとスポーツの可能性について語ってくれた山本氏
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4