■横浜FC山下の決勝点はスパイクの脱げた右足で
横浜FCは13分に大分に先制点を許すが、22分に伊藤翔のゴールで追いつく。その後はチャンスもピンチも訪れるが、両チームのGKの好守でスコアは動かない。
アウェイまで詰めかけた横浜FCのファン・サポーターが、大きく沸きあがったのは78分だ。前線への浮き球のパスを、途中出場のフェリペ・ヴィゼウがヘディングで落とす。同じく途中出場の山下諒也が反応し、左サイドからドリブルで持ち込む。背番号48を着ける164センチのアタッカーは、相手と競り合いながらも倒れず、ボールを失わず、ペナルティエリア手前まで持ち込む。
右サイドへつながれたボールはゴール前へ供給され、ファーサイドの山下のもとへ戻ってくる。胸コントロールから右足でボールを足元にセットすると、右足を柔らかく振り抜く。チームに勝点3をもたらす決勝弾が、ゴール右上隅に吸い込まれた。
加入後初の得点シーンを巻き戻すと、山下の動きが少し奇妙だ。パスを出したあとにドリブルしてきたコースを振り返り、右足を気にするような仕草も見せている。実はドリブルをスタートした直後に、右足のスパイクが脱げてしまっていたのだ。
「スパイクは脱げちゃったので分からないですけど、ある意味リラックスして打てたかなと思います」
素足で放った一撃には笑顔をこぼしたが、すぐに「とにかくチームのために、チームが勝点3を奪う力になりたくてプレーしました」と、途中出場の役割を果たしたことに胸をなでおろした。
20年に大卒で加入した東京Vでは、2シーズンで15ゴールをマークした。即戦力のドリブラーとして完全移籍してきたが、ここまでは3試合連続で途中出場となっている。それでも、「僕らは誰が出ても同じサッカーができますし、ベンチにも実力のある選手がいます。総合力で戦っていきたいと思います」と前向きだ。
この試合で先制のヘディングシュートを決めた伊藤は、今シーズン初先発だった。日本代表経験を持つ高橋秀人も、3試合目で初めてスタメンに名を連ねている。サブメンバーには中村俊輔もいる。山下が話したように、総合力はJ2屈指と言っていい。J1昇格のライバルが勝点を取り切れていないなかで、横浜FCは申し分のないスタートを切った。