■幻のワールドカップ優勝候補
さて、現在のリヴィウにはあまり強いサッカークラブは存在しませんが、世界のサッカー史上で特筆されるのは、そこがポーランド・サッカーの揺籃の地だったことです。
1863年にイングランドでアソシエーション・フットボール(つまりサッカー)という新しいスポーツが生まれました。サッカーは、イングランドからスコットランドなど英国国内に広まり、さらにベルギーやフランスなどヨーロッパ大陸に伝わって行きました。
そして、19世紀末から20世紀初頭にかけて、サッカーが盛んになったのがオーストリア=ハンガリー帝国でした。スコットランド生まれのパス・サッカーを取り入れて、たちまちオーストリアのサッカーは強化されていきました。もし、1920年代以前にワールドカップが開かれていたら、オーストリアは優勝候補だったはずです。
現在のチェコやハンガリーのサッカーのルーツもここにあります。
当時のポーランドは分割されていましたが、オーストリア領となった地域に住んでいたポーランド人もサッカーに親しむようになりました。そして、リヴィウ(ルヴフ)はオーストリア領ポーランドの中心都市だったのです。